改造の内容
BuffaloIII DACにはES9018S DACチップが使われています。
ES9018Sは、他のDACチップと違ってロック外れが発生します。
DPLLをLOWESTにすると、音の鮮度が一番良いのですが、ロックしにくく、現象としては再生音がブツブツと途切れます。
このロック外れを解消するには、色々な対策があるようです。
以前に、BCLKをICS570で逓倍して、ES9018Sのシステムクロックに入れる方式をやったことがあります。
入力サンプリング周波数毎に倍率を手動スイッチで切替えましたので面倒でした。
入力サンプリング周波数を判定して、出来るだけ100MHzに近い倍数の固定値周波数をシステムクロックにします。
44.1KHz系は90.3168MHzを、48KHz系は98.304MHzとなります。
2つのクロックを切替するために、クロック出力のON/OFF機能を持つVCXOの90MHz以上の水晶発振器はあまり売られていないので、特注になって価格も高いです。
また、半分の周波数の45.1584KHzと49.152KHzの水晶発振器は入手しやすいので、これも試してみます。
改造前のBuffaloIIIでは、ES9018Sのシステムクロックは100MHzです。
※写真はBuffaloIIですが、BuffaloIIIもほぼ同じです。
BuffaloIIIの100MHzクロックを外します。
クロックを外す際は、ハンダを溶かしながら、マイナスドライバーをクロックの底に差し込んで捻ると剥がれますが、基板のパターンまで剥がれる可能性もあります。
ニッパーで少しづつ切り取って、最後にハンダを溶かすやり方の方が安心です。
※改造は自己責任になりますので、BuffaloIIIを壊しても責任は負えません。
外した後に、8ピンのDIPコネクタを付けます。
8ピンDIPのピン配置は、図のようになります。
1,2ピンがグランド、3,4ピンがクロック入力、5,6ピンが3.3V電源です。
クロック基板にVCXOクロックとICソケット用ピンなどを載せます。
外見では区別が付きませんが、右側が44.1KHz系クロック、左側が48KHz系クロックです。
※基板の電源とクロックが逆に配線してあるミスがあったので、パターンカットと線で修正しています。
BuffaloIIIにクロック基板を載せます。
コントロール基板を製作します。
入力クロックをカウントして、44.1KHz系か48KHz系かを判定して、クロック基板のクロック切替を制御します。
入力サンプリング周波数にはBCLK信号を使うので、BuffaloIIIの入力端子(DIN)の1ピン(DCK)と2ピン(GROUND)を2本のケーブル線で、CLK-INのCLKとGに接続します。
クロック基板のCNT1コネクタと、コントロール基板のCNT3またはCNT4も3本のケーブル線で接続します。
シングルDACではCNT3を、デュアルモノDACではCNT3とCNT4を使います。
コントロール基板の電源は5Vを使います。
BuffaloIII DACシステムの電源を入れると、コントロール基板の44.1Kか48KのLEDが点灯します。
試聴してみましょう。
電源ONから1分間程度は、ES9018Sが不安定なのかロックが外れることがありますが、それ以降はロック外れは起こりません。
高解像度な清々しい音だと思います(私のシステムの場合)。
ロックされたES9018Sは素晴らしい音楽を奏でてくれます。大成功でした。
特注の90KHz系クロックが届いたので、試してみました。
じぇじぇじぇ!!
全然ロックしません。オシロで診てみるとクロック信号が出ていません。
配線などのミスはしていないのですが、何故でしょう。
改めてデータシートを見てみると、45KHz系クロックとピン配置が違うではありませんか。
部品シリーズ名が同じだったので、まさかピン仕様が違うとは思いもしませんでした。
45KHz系クロックはVXOです。
90KHz系クロックはFVXOです。先頭に「F」が付きます
ピン数が違いますが、6ピン分の位置は同じです。
1ピンと2ピンが、FVXOはVcとE/Dで、VXOはE/DとNCで、全然違いますので、これでは動かないはずです。
FVXOクロックでは、Vcの電圧によってジッター調整が出来るのかな。
調整は大変なので、Vc=1.6V(3.3Vの中点)で良いと思います。
汎用基板を使って動作確認は出来ましたので、
VXOとFVXOに対応したクロック基板を制作することにしました。
新クロック基板が出来ました。
基板のジャンパ設定でFVXOを選択します。
では、FVXOクロックを載せましょう。
うまく行くはずでしたが、クロックが出ていません。
コントロール基板を接続せずに、クロック基板の1,2選択をショートピンでやると、クロックが出ます。
クロック基板自体は動作しています。
考えてみると、クロックは3.3V動作で、コントロール基板は5V動作で、データシートによるとE/D用の信号電圧が5Vだと範囲外になるようです。
45MHz系のクロックでは問題なかったのですが、FVXOクロックでは駄目なようです。
コントロール基板の16MHz動作を8MHzに変更して、電圧を3.3Vにしたら、クロックが出るようになりました。
45MHz版でも特に不満はなかったのですが、90MHz版を聴くと45MHz版には戻れません。
聴き比べると、45MHz版は雑に感じます。
比較しなければ気にならない程度だと思うのですが、90MHz版の圧勝でしょう。
FVXOクロックは特注品で1個3千円強もしますので、もっと安いクロックが無いか探してみたら、Si560というプログラマブル周波数設定のクロックがありました。
1個1千円ぐらいで、しかも周波数安定性が7PPMの優れものです。
早速、DigiKeyに発注しました。
届いたので、新クロック基板に載せます。このクロックはVXOタイプなので、基板のジャンパ設定でVXOを選択します。
ところが、またもやクロックが出ません。
ブレッドボードでクロック基板だけを載せて、安定化電源から3.3Vを入れると、クロックが出ます。
安定化電源のアンペア値を見ると、200mAも流れています。
データシートで確認しましたが、消費電力が大きいです。
BuffaloIIIには、クロック専用に3.3V用シャントレギュレータが付いていますが、供給電流は150mAぐらいで、Si590クロックを載せると電圧が0.9Vぐらいに落ちてしまいます。
シャントレギュレータの代わりに、TPS7A4700かADP151を使った3端子基板を使うことにします。
下の写真は、左から、シャントレギュレータ、自作のTPS7A4700電源基板、自作のADP151電源基板です。
クロック基板への電圧は3.3Vが供給されていますが、まだロックしません。
なんでだろうと、Si590の仕様を確認すると、出力信号がCMOSではなくCMLのクロックを購入していました。
CMOSでないのでロックするわけはないですね。トホホ。
DegiKeyからCMOS版のSi590を取り寄せたら、クロックもOKでロックしてくれました。
C-32でケーシング
ラックス社の真空管プリアンプC-32のデザインが大好きです。
このC-32のケースを使って、今回改造したBuffaloIII DACをケーシングしました。
BuffaloIIIは、ES9018S用の各種設定をDIPスイッチで変更できますが、入力コネクタも用意されていますので、そのコネクタと、C-32のフロントパネルにあるスイッチを接続するように工夫しました。
TPS7A4700を使った電源基板も制作しました。
折角なので、シングルジッタークリーナーも入れました。
クロック基板、TPS7A4700電源基板、ジッタークリーナーのおかげか、今まで作ったES9018のDACの中では、ぴか一のDACに変身しました。
私のメインDACとなってくれそうです。